広汎性発達障害と責任能力

責任能力とは、一般的に、自らの行った行為について責任を負うことのできる能力のことを言います。

責任能力のない者に対してはその行為を非難することができず、刑罰は科せられません。

広汎性発達障害の人が犯罪を犯した場合、どのようになるのでしょう。

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広汎性発達障害と法律上の責任能力

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責任能力とは、刑法では事物の是非・善悪を弁別し、かつそれに従って行動する能力を、民法では不法行為上の責任を判断しうる能力のことを言います。

発達障害、広汎性発達障害の人たちが事件を起こした場合、責任能力があるのかどうかが裁判でも争点になります。

重度の知的障害があるのか、軽度なのか、他の精神疾患はなかったのか、善悪の判断ができたのかによって判決の内容が違ってきます。

・完全責任能力-善悪の判断が正常にできるのに犯行に及んだ事件-有罪

・心神耗弱-判断力が極端に低下している状態→刑が半分になることもある

・心神喪失-善悪の判断もできない状態→無罪になるケースが多い

・14歳に満たない者の行為は罰しない

●刑事責任能力鑑定:刑事責任能力は法律家(と裁判員)が判断するが、その判断をするときに、精神医学的な知識や経験が不足している時は、精神科医の力を借り「刑事責任能力鑑定」をおこないます。

広汎性発達障害と責任能力をめぐる諸問題

広汎性発達障害や、発達障害そのものが非行や反社会的行動に直接結びつくことはないといわれます。

しかし発達障害を基底とする二次障害(情緒や行動の問題、感覚過敏、パニック、うつ病、気分障害、強迫性障害、幻覚、妄想)に犯行との関連性がある場合があります。

発達障害の特性である強いこだわりや頑固さ、コミュニケーションの不自然さが周囲との関係悪化を招くことは少なくありません。

いじめ、からかい、不登校、ひきこもり、社会に適応できない、社会からの孤立等から犯罪、非行につながるケースが多いのです。

アスペルガー症候群を持つ人の暴行事件、猟奇的な殺人事件の容疑者を調べてみると、共通する部分があります。

非社会的感覚による行動、コミュニケーション能力、思考が、相手に対して悪いと思っていない、反省する態度が見られない、大胆、悪質な犯行であるという誤解を招き、世間を驚愕させることがあります。

広汎性発達障害の人は、事実を正しく認識し、説明することが苦手、状況に対して不適切な発言をしてしまうことがあるため、彼らの供述が正しく理解されないことがあり、彼らの供述は実際と異なった悪印象を招く恐れがあります。

広汎性発達障害の責任能力だけを追求した事件判決

大阪で起こったアスペルガー症候群の男性が姉を殺害した事件は、一審判決で検察側の懲役16年の求刑を上回る懲役20年の判決がくだされ波紋を呼びました。

経緯は、男性は小学校高学年の頃から不登校になり、以後約30年間引きこもるようになった(本人はアスペルガー症候群だった)

転校することなどを聞き入れなかったのを全て姉のせいだと思い、何年も社会から孤立した中で、姉に対する恨みを募らせていき、事件に至ります。

裁判では弁護側の精神鑑定で男性にアスペルガー症候群があり、心神耗弱状態だったとして保護観察付きの執行猶予を求めており、一方で検察側は懲役16年を求刑しました。

2012年7月30日、大阪地方裁判所は「家族が同居を望んでいないため社会の受け皿がなく、再犯の可能性が心配される。許される限り刑務所に収容することが社会秩序の維持にも役立つ」とし、検察側の求刑より重い懲役20年を言い渡しました。

弁護側はこの判決を不服として控訴します。

結局2013年に大阪高等裁判所は「一審判決はアスペルガー症候群の影響を正当に評価していない」「十分に反省を示せないのは同症候群の影響、それなりの反省を深めつつあり、再犯可能性を推認させる状況でない」として、1審判決を破棄し懲役14年の判決を言い渡します。

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広汎性発達障害と責任能力の本質的な問題解決

この他にも、発達障害の人が起こした数々の事件があります。

こうした事件は広汎性発達障害そのものではなく、障害に気づかない周囲からの孤立が背景にあるといわれています。

障害に対する適切な治療と周囲の理解があれば、防げたケースが多いだろうといわれますが、先の裁判の判決にもあったように、社会に受け皿がないということも現実です。

二度とこのような痛ましい事件が起きないためには、何が必要なのでしょうか。

軽度の発達障害、アスペルガー症候群は知能が高い人が多いですが、社会性、コミュニケーションに問題がありながらも知能が高いからと支援を受けられずに成長する子供たちも多いのです。

その子ども達が成人になる過程において、適切な支援や理解を得られないまま社会に放り出され、行き場もなく、あげくの果て犯罪を引き起こす例が生じています。

広汎性発達障害、発達障害を持つ人には、周りの理解と支援が必要です。

社会に適応できない成人の発達障害者は、社会から孤立しやすく、家族間で問題が解決できないこともあります。

そういう場合は外部からの指導、補導、環境調整が重要になります。

反社会的行動があった場合は、それが許されない行為であることを知らせる、理解させることが、その種の行為の常同化の阻止、抑止、予防になります。

広汎性発達障害の人を取り巻く現状

平成14年に発達障害支援センターが全国に11ヶ所設置され、現在では全国79ヶ所のセンターと20ヶ所のブランチや支所が設置されています。

発達障害支援センターの役割は相談支援、療育支援および就労支援、自閉症児の関係施設職員、学校、特別支援学校の教職員への情報提供および研修、連絡調整等で、主に機関への支援といった間接支援を行うことでした。

しかし、センターが開設してからのニーズは、とにかく知的障害のある自閉症児や問題行動にどう対応したらいいのか教えてほしいという相談が後を絶たなかったといいます。

広汎性発達障害は人間関係の障害のために社会生活適応が困難という特性があり、その特性を踏まえた対応が求められています。

また、知的障害を伴わない人たちが、社会生活や就労に困難を抱えるという共通の課題を抱えながら、知的障害を伴わないという理由で、福祉的対応がなされてこなかった背景があります。

最近になってメディアなどの情報により、自分が発達障害ではないかと医療とつながる前に相談する人が増えてきたといいます。

特に大人になって就労したが継続できない、周囲に発達障害を指摘された、家族が気づいて相談に来るという人たちに対して、診断のできる病院を紹介しています。

しかし、医療機関につなげようとしても、専門医が少ないことから3ヶ月から1年以上待機しなければならず、待っている間に受診を受けずにサービスを受けられないまま離れていく人もいるといいます。

やっと診断を受けても、家族や学校、職場などの周囲の発達障害に対する対応が間に合わなかったり、相互の理解が深まらずに適切な支援が受けられない場合があります。

これらのことから一貫した支援が受けられずに、いじめやからかいの対象になる、二次障害を起こす、不登校、ひきこもりになってしまう場合もあります。

広汎性発達障害の人が支援を受けるためには、医療、教育、福祉、労働、心のケア、周囲の理解などの総合的な支援体制が必要なのです。

発達障害を取り巻く支援は制度面でも構築されてきていますが、ひとりひとりに対する具体的な支援は行き届いていないようです。

まとめ

広汎性発達障害を持つ人が、社会に適応するためには総合的な支援体制が必要であるにもかかわらず、その対応に追われている現状は、更に悪い状況を生み出す可能性があります。

広汎性発達障害や、発達障害の人の触法行為、事件がこれからも起こったとき、その責任能力をめぐる判断をする時、受け皿がないという社会の現実を早く解決していかなければなりません。

総合的な人材育成には時間とお金がかかります。

医療や発達障害支援センターを利用しつつ、個々の意識の向上も願われていると思います。

広汎性発達障害の個人や家族、周囲の関連機関の地道な努力が、障害や支援に対する知識と理解を高め、今後の事件を減らしていくことになるのでしょう。

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