タイプ別に見る広汎性発達障害
広汎性発達障害は、障害が軽度の人を含めると100人に1人の割合でみられる発達障害の一つであり、自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、レット症候群、高機能自閉症、特定不能の広汎性発達障害などが含まれます。
これらはひとつのカテゴリーに入っているものの様々なタイプがあります。
タイプ別の違いを見ていきましょう。
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広汎性発達障害にはいくつかのタイプがある
(クイックすると大きくなります)
よく知られているのは自閉症です。
自閉症の子供をテーマにしたドラマや漫画があるので、この名前を知っている人は多いと思います。
自閉症は先天的な脳の機能障害で、知的障害を伴う場合と知的障害を伴わない場合があります。
IQ70以下を知的障害、IQ70~85は境界領域知能と呼ばれています。
重度の自閉症の人は言葉の遅れ、多動、こだわり、感覚過敏、自傷行為、てんかん、睡眠障害等が見られます。
自分の殻に閉じこもってしまうようなイメージを持つ方もいますが、定型発達の人とは違う情報処理の仕方をするので、社会性、コミュニケーション、想像力の特徴があるということです。
自閉症は親の愛情不足や養育態度が原因ではありませんが、今でも間違った認識で見られることがあります。
言葉の遅れが無い高機能自閉症やアスペルガー症候群の人は、身辺自立はできるので日常生活に支障をきたすほどではありませんが、自閉症の本質的な部分が軽いわけではありません。
さらに、自閉症ほど典型的ではないものの自閉症としての特徴がいくつかみられることを指して、非定型自閉症、または特定不能の広汎性発達障害と言うこともあります。
このように知的障害の有無、症状の重症度によって呼び方が異なりますが、自閉症とアスペルガー症候群、非定型自閉症、高機能自閉症などを広汎性発達障害または自閉症スペクトラムといいます。
広汎性発達障害のタイプ別の特徴
●知的障害のある自閉症
このタイプは早くから広汎性発達障害の特性が現れるので、3歳くらいまでに診断が可能といわれています。
・言葉の遅れがある
・目を合わせようとしない
・名前を呼んでも振り向かない
・多動
・初めての場所に不安になる
・同じ行動をしたがる
・クレーン現象
・かんしゃく、パニックをおこす
・てんかんを起こす場合もある
・睡眠障害がある場合がある
・自傷行為をする場合がある
・五感からの刺激に極度に敏感である
・痛みに鈍感な場合がある
・興味の対象には深い関心を向ける
・驚異的な記憶力をもつことがある
・くるくる回ったり、飛び跳ねたり、手をひらひらさせることがある
・CMや漫画のワンシーンを覚えて口ずさむことがある
・一度に複数のことができない
●アスペルガー症候群、高機能自閉症
言葉の遅れがない分発見が遅れたり、障害に気づかないまま成人になることもあります。
・言葉を話すが、言葉の意味をすべて理解しているわけではない
・相手の言葉を遮って、自分のことばかり話し続けてしまう
・思ったことを口に出してしまい、相手を傷つけることがある
・コミュニケーションが苦手
・感覚過敏がある
・周りからわがままな子、変った子と思われることが多い
・からかいやいじめの対象になることがある
・手先が不器用なことがある
・空想癖がある
・突然の予定変更に臨機応変に対応できない
・一度に複数のことができない
・3人以上の会話に入っていけない
・IQが高く成績が優秀な人もいる
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広汎性発達障害のタイプ別の接し方と支援について
同じ広汎性発達障害でもタイプ、年齢や性格、環境などにより、一人一人特徴の現れ方は違います。
生活の中でできること、できないこと、得意なこと、苦手なことも一人一人違います。
そのため一人一人の特徴に応じて配慮したり、支援することが大切です。
家族や学校、職場など身近な場所で、広汎性発達障害の人と接する基本的なポイントをいくつか挙げておきましょう。
●言葉で言うより視覚的な情報を提供する
言葉で言われるよりも、目で見て分かる情報のほうが理解しやすいといわれています。
指示は簡単で具体的に、写真や絵カードなどを添えて説明してあげると理解しやすくなります。
月間予定をカレンダーに書き込み、一日の日程はボードに書いて、スケジュールを明確にしてあげましょう。
●本人のできることからはじめる
ほかの人が簡単にできることでも、うまくできないことがあります。
できないからと失敗を責めたり、叱ったりすると、本人が「自分はだめだ」と思い込んだり、他の人や社会に対して批判的・攻撃的・反社会的行動傾向が強まったりしてしまいます。
小さい成功体験を積み上げていくことが大切です。
●指示する時は簡単明瞭に
広汎性発達障害の子ども(人)はあいまいな表現を理解するのが苦手です。
また、一度に複数の指示を与えると混乱します。
言葉で説明するときは、ゆっくり、短く、一つづつ、具体的にしましょう。
●安心できる環境づくりを配慮する
広汎性発達障害の人たちの中には、人ごみや大きな音、光などの刺激に敏感な人がいます。
突然肩をたたかれたり、ぶつかったりすると不安になる人もいます。
そのような刺激による不安、恐れを大きくしないよう、安心できる環境をつくってあげましょう。
●善悪や社会のルールははっきり教える
広汎性発達障害のある人は、暗黙の了解や社会のルールが分からないことがあります。
いけないことや迷惑なことははっきり教えましょう。
注意したり、叱ったりするだけでは、どうしたらよいのか分からないので、ソーシャルスキルトレーニングなどで具体的にどのようにしたらよいかを教えましょう。
●広汎性発達障害の子ども(人)を温かく見守る
子どもが騒いだり、パニックを起こしたりしているとき、「なぜ親は叱らないんだ」といら立つ場合があるかもしれません。
しかし、広汎性発達障害の人に大声で叱ったり非難することは、余計に不安がらせることがあります。
周囲の人にこうした知識があるだけで、本人も家族も楽になれます。
広汎性発達障害のタイプ別の社会的支援
知的障害がある広汎性発達障害の場合は療育手帳を申請することができ、特別支援学校への入学や、特別児童扶養手当などの社会的支援を受けることができます。
療育手帳の発行は各自治体の判断によるため、境界領域知能の場合は療育手帳の申請が出来る場合とできない場合があります。
知的障害のない広汎性発達障害の人は精神障害者保健福祉手帳を申請することができます。
申請には専門医の診断書が必要になります。
福祉手帳の申請についてはこちらも参考にしてください。
広汎性発達障害がある場合、早期発見と早期療育につなぐことで、社会に適応する能力を身につけ、さまざまな能力を伸ばしていくことができます。
こどもが発達障害なのだろうかと気になること、心配などがあるときは、管轄の発達障害支援センターに相談されてください。
発達障害者支援センターでは、日常生活の相談をはじめ、医療、保健、福祉、教育、労働等の各関係機関と連携を図りながら、障害の特性とライフステージに合わせた支援を提供しています。
まとめ
広汎性発達障害のタイプ別に簡単にまとめてみました。
広汎性発達障害や発達障害について、名前くらいは知っているといるという人はいるかもしれませんが、どんな障害なのか知っている人はまだまだ少ないのではないでしょうか。
実際身近にそういう人がいないと、実感がわかないものですが、ぜんぜん知らない人から見ると理解できない部分が多い障害です。
大きくなっても順番が待てないとか、人ごみで叫んだり、飛び跳ねたり、奇声を発したり、ぶつぶつ独り言をいっている人を見たことがあるでしょうか。
つい最近の熊本地震でも、自閉症など発達障害を持つ子供やその家族の多くが、トラブルを恐れて避難所に入れず、車や自宅での生活を強いられていると言う記事を読みました。
日本の社会における発達障害の認知度はまだまだ低いのだなという現実を感じます。
発達障害を持つ当事者や親が安心して生活できる環境が整えられるためには、何ができるのだろうかと常に考えていこうと思います。
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